スクールを途中でやめるといくら戻るか|中途解約の上限額と、返金不可の条項が無効になる条件

受講前にやめたときの上限 は 15,000円(パソコン教室・語学教室の場合/特商法施行令 別表第四)

スクールは安い買い物ではありません。プログラミングスクールなら数十万円、なかには100万円近いものもあります。始めてみて合わなかったとき、いくら戻るのか。これを契約前に確認している人はほとんどいません。

実は、一定の条件を満たす契約では途中でやめる権利と、事業者が取れる金額の上限が法律で決まっています。契約書に「返金不可」と書かれていても、その条項は無効になります。このページでは条文と政令で上限を確認し、自分の契約でいくら戻るかを計算できるようにしています(2026年9月4日確認)。

目次

対象になるのは、3つの条件を満たす契約です

特定商取引法の「特定継続的役務提供」にあたる契約には、中途解約の規定が適用されます。条件は3つです。

条件根拠
1政令で定める7種類の役務にあたること特商法41条2項・施行令25条
2政令で定める期間を超えること施行令24条1項・別表第四
3金額が5万円を超えること施行令24条2項
e-Gov法令検索で条文を確認

7種類の役務と、それぞれの上限額

役務期間受講後に取れる額の上限受講前
パソコン教室2か月超5万円 または 契約残額の20% の低い方1万5千円
語学教室2か月超5万円 または 契約残額の20% の低い方1万5千円
家庭教師2か月超5万円 または 1か月分の対価 の低い方2万円
学習塾2か月超2万円 または 1か月分の対価 の低い方1万1千円
エステティック1か月超2万円 または 契約残額の10% の低い方2万円
美容医療1か月超5万円 または 契約残額の20% の低い方2万円
結婚相手紹介2か月超2万円 または 契約残額の20% の低い方3万円
特定商取引に関する法律施行令 別表第四。e-Gov法令検索で条文を確認

「受講後に取れる額」は、すでに受けた分の対価に上乗せできる額です。受けた分は当然払うことになりますが、それに加えて取れるのはこの額までです。

取れる額の上限は、条文で決まっています

特定商取引法49条2項は、中途解約されたときに事業者が請求できる額をこう定めています。

役務提供事業者は、(中略)特定継続的役務提供契約が解除されたときは、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額に(中略)遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を(中略)請求することができない。
一 解除が特定継続的役務の提供開始後である場合 次の額を合算した額
 イ 提供された特定継続的役務の対価に相当する額
 ロ 解除によつて通常生ずる損害の額として(中略)政令で定める額
二 解除が特定継続的役務の提供開始前である場合 契約の締結及び履行のために通常要する費用の額として(中略)政令で定める額

「損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても」という部分が効きます。契約書にいくらと書いてあっても、この上限を超えて請求することはできません。

★「返金しません」という条項は無効になります

同じ49条の最後に、こうあります。

前各項の規定に反する特約で特定継続的役務提供受領者等に不利なものは、無効とする。

「途中解約の場合、受講料は一切返金いたしません」「解約手数料として受講料の50%を申し受けます」といった条項は、上限を超える部分について効力を持ちません。署名していても同じです。

受講前と受講後で、金額が桁違いに変わります

60万円・4か月のパソコン教室の契約を全額前払いした場合で計算すると、こうなります。

やめる時期事業者が取れる上限戻る額
受講開始前15,000円585,000円
1か月受講後200,000円400,000円
2か月受講後350,000円250,000円
3か月受講後480,000円120,000円
別表第四6の項(5万円または契約残額の20%の低い方/開始前は1万5千円)で当サイトが計算

受講を始める前にやめれば、上限は15,000円です。申し込んだあと不安になったなら、初回の授業を受ける前に判断したほうが金額の差は大きくなります。

8日以内なら、全額戻ります

中途解約の前に、クーリング・オフが使えないかを確認してください。特商法48条により、契約書面を受け取った日から起算して8日以内なら、書面または電磁的記録で契約を解除できます。

条文内容
48条4項事業者は損害賠償や違約金を請求できない
48条6項すでに役務提供が行われていても対価の支払を請求できない
48条2項一緒に買った関連商品も解除できる
48条3項解除の効力は通知を発した時に生じる
e-Gov法令検索で条文を確認

48条6項が重要です。すでに授業を受けていても、その分の対価すら請求されません。中途解約とはまったく違います。

書面を受け取っていなければ、8日は始まっていません

起算点は「第42条2項又は第3項の書面を受領した日」です。特商法42条は、契約前に概要書面を、契約時に契約書面を交付することを事業者に義務づけています。契約書面に法定の記載事項が欠けている場合も含め、書面を受け取っていなければ8日の数え始めが来ていません。

契約書面に書かなければならない事項には、48条のクーリング・オフに関する事項と、49条の中途解約に関する事項が含まれます(42条2項5号・6号)。これらが書かれていない書面は、法定の書面として不十分な可能性があります。

教材やパソコンも一緒に解約できます

受講に必要だとして買わされた商品は関連商品として政令で定められており、本体の契約を解除すればこちらも解除できます。

役務関連商品
パソコン教室電子計算機・ワードプロセッサーおよびその部品・附属品/書籍/記録媒体
語学教室・家庭教師・学習塾書籍/記録媒体/ファクシミリ装置・テレビ電話装置
特定商取引に関する法律施行令 別表第五。e-Gov法令検索で条文を確認

「受講にはこのパソコンが必要です」と勧められて買った場合、そのパソコンも解約の対象になりえます。

プログラミングスクールは対象になるのか

ここが多くの人の知りたいところですが、条文にも通達にも「プログラミングスクール」という言葉は出てきません。政令別表第四の6の項は「電子計算機又はワードプロセッサーの操作に関する知識又は技術の教授」です。消費者庁の通達は、この範囲をこう説明しています。

いわゆるパソコン教室である。電子計算機とは、演算機能と入出力装置を持つものを広く想定したものであり、パーソナル・コンピュータのほか、タブレットPCやスマートフォンについても電子計算機に該当する。これら電子計算機やワードプロセッサーの操作に関する知識や技術を教授するものが対象である。
この電子計算機やワードプロセッサーの操作に関する知識や技術と共に他の知識や技術を教授するような役務の場合であっても、それらが一体不可分となっており、全体としてパソコンの操作に関する知識又は技術の教授を行っていると考えられる場合には、そういった他の知識や技術の教授の部分を含め当該役務全体として規制対象となる。他方、他の知識や技術の教授の部分が役務として明確に分割できるのであれば、分割された(中略)部分が特定継続的役務の要件を満たす限り、当該部分のみで規制対象となる。
出典:消費者庁「特定商取引に関する法律等の施行について」(通達)第4章 特定継続的役務提供 第41条の解説より

読み取れるのは次の点です。

スマートフォンやタブレットも「電子計算機」に含まれる
他の知識と一体不可分なら、その部分も含めて全体が規制対象になりうる
明確に分割できるなら、パソコン操作の部分だけが対象になる

個々のスクールが対象になるかは、契約の内容と実際のサービスで判断されます。当サイトでは断定できません。ただし判断の手がかりはあります。契約書面に中途解約についての記載があるかどうかです。42条2項6号は中途解約に関する事項を契約書面の記載事項としているため、事業者が自ら対象と認識していれば記載があります。

迷う場合は、契約書を持って消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談してください。判断は個別の契約ごとに行われます。

あなたの契約で計算する

役務の種類と金額を入れると、事業者が請求できる額の上限と、戻るはずの額が出ます。

途中でやめたとき、いくら戻るか

特定商取引法49条と政令別表第四で決まっている上限から計算します

政令で定められた7種類です。ここに当てはまらない役務は、この制度の対象外です。

円

入学金や教材費を含む、契約全体の金額を入れてください。

か月
か月

まだ始めていない場合は0を入れてください。金額が大きく変わります。

円

分割払いでこれから払う分がある場合は、実際に払った額を入れてください。

  • 提供された役務の対価に相当する額は、契約期間に対する受講期間の割合で計算しています。実際の算定方法は契約内容によって異なることがあります。
  • 解除によって通常生ずる損害の額は、特定商取引法施行令 別表第四の第三欄の額です。パソコン教室と語学教室は「5万円または契約残額の20%のいずれか低い額」です。
  • 提供開始前の額は、同表第四欄の「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」です。
  • この計算は上限を示すものです。実際にいくら請求されるかは契約と事業者の対応によります。上限を超える請求はできません。
  • 入会金や事務手数料の扱いは契約によって異なります。ここでは契約総額に含めて計算しています。
  • 役務の内容が政令の7種類にあたるかどうかは、契約書の記載と実際のサービス内容で判断されます。判断に迷う場合は消費生活センターにご相談ください。

契約する前に確認すること

確認することなぜ
1契約期間は何か月か2か月以内なら制度の対象外
2契約書面に中途解約の記載があるか事業者の認識がわかる。42条2項6号の記載事項
3クーリング・オフの記載があるか42条2項5号の記載事項
4教材やパソコンを別に買う必要があるか関連商品にあたれば一緒に解除できる
5「返金不可」の条項が入っていないか入っていても上限を超える部分は無効

2を確認するだけで、契約の性格がかなりわかります。記載がない場合は、なぜ無いのかを聞いてみてください。

よくある質問

契約書に「返金は一切しません」と書いてあり、署名もしました

特定継続的役務提供にあたる契約なら、特商法49条7項により、法の規定に反して消費者に不利な特約は無効です。署名していても、上限を超える請求はできません。ただし、その契約が特定継続的役務提供にあたるかどうかが前提になります。契約書を持って消費生活センターにご相談ください。

オンライン完結のスクールでも対象になりますか

条文と通達は提供の場所を要件にしていません。対象かどうかは役務の内容と、期間・金額の条件で決まります。ただし学習塾については、政令が「役務提供事業者が用意する場所において提供されるもの」に限っているため、区分によって扱いが異なります。個別の判断は消費生活センターにご確認ください。

クーリング・オフの8日を過ぎてしまいました

中途解約を検討してください。特商法49条1項により、8日を過ぎた後でも将来に向かって解除できます。事業者が請求できる額には上限があります。なお、契約書面を受け取っていない場合や、法定の記載事項が欠けている場合は、8日の起算が始まっていない可能性があります。

すでに受けた授業の分は払うことになりますか

中途解約の場合は、提供された役務の対価に相当する額を払うことになります。クーリング・オフの場合は違います。特商法48条6項は、すでに役務提供が行われていても対価の支払を請求できないと定めています。

「転職できなければ全額返金」という保証はどうなりますか

それは事業者が任意で付けている契約上の特典で、法律の制度とは別のものです。適用条件は契約書に書かれています。条件を満たさなかった場合でも、特定継続的役務提供にあたる契約なら中途解約の規定は使えます。2つは別の制度なので、両方を確認してください。

どこに相談すればよいですか

消費者ホットライン188に電話すると、お住まいの地域の消費生活センターにつながります。相談は無料です。契約書・パンフレット・支払いの記録・やりとりのメールを手元にそろえてから連絡してください。

確認先

特商法・施行令の条文e-Gov法令検索
制度の解説・通達消費者庁「特定商取引法ガイド」
個別の契約の相談消費生活センター(消費者ホットライン188)
教育訓練給付の対象講座厚生労働省/ハローワーク

このページは制度の仕組みと計算方法を整理したものです。個別の契約が特定継続的役務提供にあたるかどうかの判断は行っていません。実際にいくら戻るかは契約内容と事業者の対応によります。当サイトは法律事務所ではなく、個別の相談には応じられません。内容は2026年9月4日時点で法令および消費者庁の公表資料を確認して作成しています。

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この記事を書いた人

副業・学び直し・独立にかかるお金と制度を、公式が公表している数字だけで整理しています。金額・条件・期限はすべて省庁や各サービスの公式ページで直接確認し、各ページに確認日を記載しています。

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